ドリー夢小説

デルタ島にて

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マリンデザートフィールド7−デルタ島。
「よーし、狩るぞー!」
意気揚揚とウッドヘルムをキュッと被り直し、背後にいるを見やる。
「のんびりしてっと、置いてくかんな」
はぐれるなよ?と念を押すと、はニカッと笑った。
(それはこちらのセリフだ……)
初めてのフィールドで気持ちが昂ぶっているのはいつものことだ。
今のに何を言ってもどうせ聞こえはしないだろう。
はすでに歩き出す前から疲れたと言わんばかりに重い溜息を吐いた。
ここに来るまでに聞いた情報によると、レベル20のには少々荷が重過ぎると思う。
そもそも、本人は自分の力量をきちんと把握しているのだろうか。
レベルが上がっても目の前のモンスターばかりに気を取られて、
ステータスの振り分けものアドバイスがなければ、好き放題に乱れた結果になっていたはずだ。
「おーい! 早くこねーと置いてくぞー」
すぐ目の前で聞こえていたはずのの声が遠くなった。
は慌てて顔を上げると、すでにはワープループの目の前にある橋を渡っていた。
(あのバカ……)
はすばやく呪文を詠唱する。
キーンと時が弾けた。
の全身をキラキラと光が包むともその光は刃となっての背後にいたモエモンへと向かっていく。
「へ?」
の頭上をが放ったマジックアローが過ぎていくと、
は素っ頓狂な声を出して上空を見上げ、そのままつられるように振り向いた。
けれど、何もいない。
ただ足元には大量の砂が積もっていただけ。
「なんだこれ」
「『良質の砂』だ」
ようやく橋を渡ってきたがぴしゃりとに向かって言葉を投げた。
モンスター?と聞き返そうとしてを見たは、体に冷たい風が流れるのを感じ、思わず一歩後退する。
「いいか、俺からはぐれるなよ」
無愛想なの瞳が、更に鋭くなっている気がして、は「しまった」と心の中で呟く。
(なんか怒ってる……?)
「聞こえたか?」
こくりこくりと頷くと、は肩でほっと息を吐き、
その瞳から鋭さが徐々に消えていったのを確認すると、は落ちている『良質の砂』を拾った。
はぐれないように、はぐれないように。
は心の中での言葉を繰り返す。
そして、杖を持っていないの右手を握った。
「よーし、狩るぞー!」
は自分の手を握っているの左を見る。
確かにこれならはぐれない。
だが、お前はどうやってモンスターと戦うんだ?

けれど、言葉に出来ない甘い感情が邪魔をして自分から離すことなど出来ない。
出来る限りモンスターがいない所を探しながら、
しばしに付き合ってやるしかないなと、は足取り軽く歩き出した。